6割以上が「反対」——この数字が意味するもの
AIへの期待が高まる一方で、「多くの人が実は歓迎していない」とすれば、どう思いますか。
ニューヨーク・タイムズとシエナ大学が実施した世論調査の結果が公表され、AIを動かすためのデータセンター建設に「反対」と答えた有権者が61%に達したことが分かりました。
調査対象は1,503人の有権者で、統計的に一定の信頼性があるサンプルサイズです。
何が明らかになったのか
この調査で特に興味深いのは、反対意見が特定の政党支持者に偏っていないという点です。
民主党支持者も共和党支持者も、おおむね同じように「AIとデータセンターが好きではない」という傾向を示しており、どちらの党もこの問題で有権者の支持を取り込む優位性を持っていないとされています。
言い換えると、「AI推進か否か」が選挙の争点として機能しにくい状況です。
両党の政治家がAI政策を積極的に打ち出しにくい構図が、データとして裏付けられた形です。
なぜこうなったのか——背景を読む
データセンターは、AIサービスを動かすための巨大な計算基盤です。
サーバーを大量に稼働させるため、電力消費と発熱が非常に大きく、冷却のための水も大量に使います。
近年、米国各地でデータセンターの建設が急増しており、地域住民から「電気代が上がる」「水資源が枯渇する」「騒音がひどい」といった反発が相次いでいます。
こうした身近な生活への影響が、世論の不満として積み上がっていると考えられます。
また、AIそのものに対しても「雇用を奪う」「使い方が信用できない」という不安感が根強く残っています。
便利なツールとして体験する機会が増えた一方で、社会全体への影響については懐疑的な見方が多数派であることが、今回の調査で改めて浮き彫りになりました。
日本にいる私たちにも関係する話
「アメリカの選挙調査が自分に何の関係があるの?」と思うかもしれません。
ただ、この調査が示している構図は日本でも起きていることと重なります。
日本でもデータセンターの建設計画が各地で進んでおり、地域住民との摩擦や電力需給への懸念が報じられています。
AIを「使う側」の体験と、インフラを「受け入れる側」の体験は大きく乖離していて、その溝を誰がどう埋めるかは、まだ答えが出ていません。
政治的には、AIを推進する政策を掲げるほど有権者の反発を買いやすい——という皮肉な状況は、日本の政策論議にも共通するリスクといえます。
まとめにかえて——「支持されていない」のに広がる技術
今回の調査から持ち帰れる視点は一つです。
「テクノロジーの普及速度」と「社会的な合意形成の速度」は、全くの別物だということです。
AIとデータセンターは、世論の支持を得る前に急速に拡大しています。
政治家が旗を振りにくい分野であれば、変化をけん引するのは企業や市民社会になります。
その変化を「受け取る側」として眺めるのか、あるいは意見を持つ市民として関わるのかは、読者一人ひとりの選択です。
まず自分の地域でデータセンターや電力政策に関する動きがないか、調べてみるのが一歩になるかもしれません。
出典: The Verge「Voters mostly don’t like AI and data centers, but neither party seems to have an edge」
https://www.theverge.com/ai-artificial-intelligence/995917/data-center-nyt-midterm-poll-september
